この安藤昌益を描いた「自り伝」は
2012年12月にシアター1010ミニシアターで上演した作品が
その後、続編としてシリーズモノとなった。
平石がイギリスで学んだ演出方法、完全4面客席という公演を試み
スタッフも俳優も一丸となって作り上げてきた。
史実は、昌益には全国に弟子がいて
八戸で開催した講演に、全国から弟子たちが
集まったことが分かっている。
物語では、八戸を目指しつつ全国各地を旅をして
訪れた村で問題解決にあたる。
そこで昌益思想に触れたものが
弟子になって行くと言う設定で
第5話まで上演していました。
しかし、2022年5月。
主演の根岸光太郎の病気が判明。
これまで舞台一筋で演劇活動をしてきた彼が
この先、舞台に立つことは難しいと判明したのでした。
・・・・・・
2022年6月
平石耕一事務所メンバーは、本人の意思確認の上
「自り伝」を根岸光太郎で完結させようと決めたのです。
《6/9会議・完結編上演決定》
上演するためには、根岸さんの体調について
十分な理解が必要です。
そこで、彼が主催する「劇集団光」(メンバーは、声優講師の頃の教え子たち)や
それよりも更に以前の演劇活動をしていた頃の後輩たちに
出演とスタッフとしての協力を呼び掛けました。
本来の演劇興業の常識ではあり得ません。
主役が当日、舞台に立てるかどうか不明
セリフをまともに話せる状態にあるか不明
それでも、根岸さんを慕う後輩たちは
全力でサポートすることを決意して集まりました。
稽古場と並行して
完結するための取材や外部との関わりも
進んで行きます。
八戸取材(2022年10月、11月、2023年2月)①
安藤昌益資料館(代表:根城秀峰氏 館長:三浦忠司氏 スタッフ:久保沢様)
今回初めて、主演の根岸を紹介する事になりました。
不自由な状態の根岸光太郎を主演とする件を
どうお伝えすれば良いか非常に不安がありました。
しかし、根岸を伴ってシンポジウムに参加した私共を
寛大なお気持ちで受け入れて下さったのです。
本当に嬉しい事でした。

《天聖寺にて・昌益シンポジウム11月》

《安藤昌益資料館訪問》
②出会い
郷土芸能「えんぶり」を作品に盛り込みたいと考え
昌益資料館よりご紹介いただいた方が
戸来元(へらい・はじめ)さん。
自身がえんぶりの太夫で研究者
ご著書「えんぶり私考」3回の取材時に毎日ご一緒くださり
えんぶりについて熱く語っていただきました。
実際にえんぶりの稽古も付けて下さいました。
《青空指導を受けた俳優》
八戸滞在中、足の不自由な根岸のため
お車を運転して下さった事
東京の稽古場まで駆け付けて下さった事
この演劇期間中、深くお付き合い下さいました。
《稽古場訪問・戸来さんを囲んで》

《写真中央・瀬川さん、右・戸来さん》
一番最初の取材時に、八戸のガイドをして下さったのが
瀬川征吉さんです。
週刊八戸の編集長でもあります。
滞在の折、毎日のようにお目に掛かり
何かとご相談させていただき
宣伝の協力も引き受けて下さった方です。
③新井田仲町えんぶり組の出演
八戸の郷土芸能『えんぶり』
本物をぜひ観客に届けたい、この一心で出演をお願い致しました。
新井田仲町えんぶり組の代表・上野(うわの)さん
仲立ちをして下さったのが
新井田にある居酒屋「五条坂」の女将さん。
こちらが訪問する日に、上野さんが来店するよう
お願いして下さったのです。
マスターは、京都出身。
店内も広々してとても綺麗。
お料理もどれも美味しく頂きました。
もしも八戸に行く機会があれば
またぜひ来店したいです!
《左から2番目》
五条坂 TEL0178-25-8977
新井田仲町えんぶり組の出演土日の公演、3回だけではありますが
俳優がえんぶりを舞った後に
新井田仲町えんぶり組の太夫3名と
代表、上野さんが登場して下さいました。
お客様からお伺いした感想を一つご紹介します。
「郷土芸能には、その本来の意味もあって今日まで続いている事を
改めて感じました。演劇と一緒に見ることで、胸がいっぱいになって
涙が溢れてきました」
ここに書ききれないほど
たくさんの出会いがありました。
関わって下さったみなさん
そして観劇してくださったみなさん
全ての方に心からお礼を申し上げます。
尚、東北の新聞にこんなに大きく扱っていただけたのは
地元の皆様のご協力があったからだと思います。
改めてお礼申し上げます。
東奥日報2023年4月8日記事より


《舞台全景》

《八戸藩五代君主・南部信興(右端)に対峙する庶民たち》

《えんぶり・畦留め(くろどめ)》
大事な田から水が漏れないように、呪文の言葉を唱える「畦留め」でえんぶりは終わります。
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